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【要約】『武器としての決断思考』瀧本哲史著【書評】

瀧本哲史著『武器としての決断思考』の書評です。

瀧本先生は京都大学で客員准教授として授業をされています。
本書は、「意思決定」の授業を一冊に凝縮したものです。

人生は意思決定の連続です。
同じ学校に通っていても、賢くなる人、バカになる人、
同じ会社で働いていても、豊かになる人、貧しくなる人がいます。

これらの違いを生むのが「意思決定」です。

言葉の定義は「目的を達成するために、自己の判断と責任をもって最適と思われるものを選び出すこと。」
一言で言うと「最善手を導き出す行為」ですね。

結果を出せる人というのは、社会の状況や自分の環境をよく理解し、最も有効であろう手段を選択し続ける人です。

最善手を選択し続けて、自分が心から納得のできる人生を送る。
そのための方法が、本記事でご紹介する『武器としての決断思考』です。

『武器としての決断思考』要約

本書は、ディベートの理論に沿って、意思決定の手段がまとめられています。

ディベートは第三者を納得させる知的な論理ゲームです。
感情に訴えかけるスピーチなどとは全く違います。

あくまでも理論上の最適解を、高度な論理空間の中で導き出します。
相手を説得するための技術でもありません。

客観的な第三者が、感情を排してポイントをつけます。

ディベートのいいところは感情に流されない点です。

人間は、感情の赴くままあらゆる失敗をしてしまいます。
家族や友人に酷い言葉を浴びせてしまったり、労力を惜しんでやるべきことをサボってしまったり、恨みに支配されて幸せを忘れてしまったりします。

社会に出ると、現在のシステムは資本主義ですので、要らないものを大量に買わされたりします。
お金を損するだけならまだマシです。
全く意味のない仕事を押し付けられて、大切な時間まで奪われたりします。

これらの失敗は、感情に流されることによって生まれます。

だからこそ“武器として”の決断思考です。決断思考は武器です。

感情で決める前に、一つ論理を挟めば、自分の人生を守ることができます。
あなたの大切な人を守ることができます。

以下、『武器としての決断思考』要約羅列です。

・学ばなければ生き残れない
・議論によって最善手を導き出す
・漠然とした問題を作業レベルまで分解する
・いかなるときも勘定をする
・反論は深く考えるための道具
・議論における正しさは反論に耐えうること
・適切な情報収集力は武器になる
・最後は自分のやりたいことを選ぶ

学ばなければ生き残れない

現実問題、日本は世界と比べてどんどん衰退しています。

・世界競争力ランキング:過去最低の34位(IMD調査)
・労働生産性:先進各国で最下位(WBG調査)
・平均賃金:35カ国中18位(OECD)
・相対的貧困率:38カ国中27位(OECD)
・教育に対する公的支出のGDP比:43カ国中40位(OECD)
・年金の所得代替率:50カ国中41位(OECD)
・障害者への公的支出のGDP費:37カ国中32位(OECD)
・失業に対する公的支出のGDP比:34カ国中31位(OECD)

正確に云うと、衰退しているというよりは昭和の時代から成長が止まっています。
「バブルだ」「ジャパンアズナンバーワンだ」と威勢の良いことを言っていましたが、昔から日本の生産性は低いままです。

日本の労働生産性は、G7の中で47年連続最下位です。(日本生産性本部調査)
“日本人”の本質的な生産性が低いのではありません。“日本”の産業構造が悪すぎます。

今までは人口の多さと価格の安さで見た目だけ良い時もあったのですが、過去に問題を後回しにしたツケがどんどん回ってきています。

そして、この日本のレベルの低さ象徴とも言えるのが、「世界トップクラスで大人が学ばない国である」という現実です。

日本の「学習や自己啓発」のポイントはAPAC地域の中で最下位です。(パーソル総合研究所調査)
日本国民の中で、全く本を読まない人の割合は47%です。(文化庁「国語に関する世論調査」)

もう「一億総中流」「周りと同じことをしていたら上手くいく」そんな見せかけの時代は終わりました。

政府がお金を注ぎ込みまくっても、見た目を良くするので精一杯です。
日本の世界的競争力は、落ち続けています。

そんな社会の中で、自分や大切な人を守るために「学習」が重要となってきます。
「知識・判断・行動」が三位一体となった「学習」です。

義務教育をいくら“学習”したからといって、うまくいっていないのは今の日本が証明しています。
「知識・判断・行動」がセットです。

自分で知識となる情報を集め、最善手を判断し、最も効果的な行動を起こす。
この「学習」が最も大事である、ということです。

議論によって最善手を導き出す

世界は目まぐるしい速度で変化しています。
その変化に全くついていけていないのが現在の日本です。

社会が変化するということは、最善手も変化します。
議論が重要なのはここに理由があります。

議論は、正解を求めるための手段ではありません。
その時々の最善手を判断するための方法です。

瀧本先生も厳しく指摘していますが、テレビの討論番組などは全く議論になっていません。

「結局、テレビの討論番組や、ツイッター、2ちゃんねるなどのインターネットの議論では、参加者が議論やディベートに関する基本的な考え方を共有していないため、うまくいきっこない。基本的に混乱するようにできているわけです。」

会社における結論の出ない無駄な会議も同じです。

「ダラダラと何回も会議を開いて、結局何も決まらないということになりがちです。「えっと、先週の会議では何を話し合ったんだっけ?」ということになって、また一から同じ内容の会議を繰り返すことになります。これぜんぶ、時間と労力の無駄。仕事の生産性を高めるためにも、やはり議論の作法を頭に叩き込んでください。」

議論は、とにかく答えを出したらそれで終わりです。
人類普遍の法則を導き出すわけではないのだから、どうでも答えを出して先に進みましょう、ということです。

その答えを質の高いものとするには、議論の作法を身につけること、これが最も重要となります。
先に根拠を徹底的に準備します。

根拠のない主張に意味はありません。
「それって個人の感想ですよね??」で話が終わります。

とにかく現状のメンバーで最善手を決定する、そして実践する、
1人なら脳内で議論をして最善手を決定する、そして実践する、これが決断思考の要です。

漠然とした問題を作業レベルまで分解する

同じく議論の話です。議題の内容になります。

議論は最善手を確認するための方法です。
ということは、“手”がでないと意味がありません。

「意思決定」で行動を決めるのだから、行動に繋がらない話は議論となりえません。
「やるのか、やらないのか」です。

決断思考は、論理的な筋道を炙り出すものです。

「飲食でバイトをするのか、コンビニでバイトをするのか」は個人の嗜好の問題ですが、
「バイトをするべきかしないべきか」という問いには、理論上の最善手を導き出せます。

最適な行動を明らかにすることが目的なので、「やるのか、やらないのか」という議題を選択します。

・都構想を導入すべきか否か
・原発を廃止すべきか否か
・就職するべきか否か
・ITスキルを学ぶべきか否か
・『武器としての決断思考』を読むべきか否か

意思決定は「知識・判断・行動」がセットです。
「しない」という行動も選択肢には発生してきます。

いかなる時もメリットとデメリットを比較する

「やるべきか否か」という議題が設定できれば、次はメリット・デメリットを競わせます。
感情を排して、勘定を計算するということですね。

メリットは、以下の3つから構成されます。

・内因性(問題であるか)
・重要性(問題は大きいか)
・解決性(問題は無くなるのか)

デメリットは、以下の3つから構成されます。

・発生過程(新たな問題)
・深刻性(問題の大きさ)
・固有性(今は問題がない)

例えば、バイトをすることのメリット・デメリットを勘定します。

メリット
・バイトをすることによってお金が稼げる
・お金がないと欲しいものが買えない
・お金を稼ぐことで欲しいものが買えるようになる

デメリット
・バイトに時間が奪われる
・貴重な時間を無駄にしてしまう
・時間を浪費することで勉強が疎かになる

反論は深く考えるための道具

このメリット・デメリットに対して反論をすることで、思考が深まっていきます。

メリット

・バイトをすることによってお金が稼げる
→バイトでは大したお金を稼げない

・お金がないと欲しいものが買えない
→欲しいものはお金以外の手段でも手に入る

・お金を稼ぐことで欲しいものが買えるようになる
→お金以外の手段を身につけないと意味がない

デメリット

・バイトに時間が奪われる
→働く時間を短くすればいい

・貴重な時間を無駄にしてしまう
→社会経験は無駄ではない

・時間を浪費することで勉強が疎かになる
→時間を効率的に使う技術が身につく

繰り返しになりますが、反論は思考を深めるための手段です。
感情をとりあえず置いておいて、理論をぶつけ合っていくことが重要です。

 

議論における正しさとは何か

議論をすることで、思考のレベルが高まっていきます。
根拠や反論が整理されていくので、理論上の最適解が分かるようになります。

その際、正しさを担保するのは「反論に耐えた根拠、主張」です。

「誰が」言ったから、などは全く関係がありません。
「何を」言ったか、いかに反論に耐えうるか、それのみです。

人間は権威性に大きく勘定を左右されます。

専門家が言ったことや有名人が言ったことを鵜呑みにするでしょう。
しかし、大切なことは「主張と根拠」「それに対する反論」です。

なんでも感情で決めてしまう前に、一旦、勘定を挟むことで冷静に考えます。
しっかりと勘定を計算することで、主張の正しさを考え直します。

社会の常識は本当に正しいのか、会社の方向性はこれでいいのか、自分の人生はこれでいいのか
そういったことを「知識・判断・行動」ベースで再確認できるのが「意思決定力」です。

武器としての情報収集術

以上のように議論を進めるする上では、主張を担保する「証拠書類」を集めます。

もう結論が出ていることでも、その結論に至った「理由」を探るのは重要です。
証拠書類と主張を繋げるのが「理由」です。

瀧本先生はこう言います。

「大学以降の人生では。情報に接したら、それが本当かどうかをまず疑ってください。」

人間は不完全情報なので、その人間が作った社会の情報・主張には歪みが生じます。
主張はまず、理由と根拠を確認することが大切です。

これが「本当かどうか疑う」ということです。
根拠が、自身の反論に耐えうるものであれば、それを自身の考えに導入できます。
反論の方が強かったら、自身の新しい考えができます。

その際にやはり重要なのは「証拠書類」を集めることです。
反論材料を増やすための情報もまた大切です。

【決断するということ】まとめ

・メリット・デメリットを洗い出す
・証拠書類を考慮しながら反論する
・生き残ったメリット・デメリットを比較する
・最善手を判断する

以上が、意思決定の理論となります

ひたすら客観的正しさを確認する作業です。

客観的正しさが明らかになった後に大切なことがあります。

それは、「最後は自分のやりたいことを選ぶ」ということです。

結論として、最後は自分のやりたいことを選択するのですが、意思決定理論を挟むことで、やりたいことがパワーアップします。
なぜなら、その決定は感情的に選んだものでなく、論理性を考慮した上での決定だからです。

勘定を挟んでおくことで、周りの意見に左右されなくなります。
周りから集まる主張やアドバイスに対して、すでに反論を用意しているからです。

ときには、自分の反論材料を超えてくる意見をもった人も現れます。
そういった人が出てきたらラッキーです。

素直に受け止めて、今までの自分の意見をパワーアップしましょう。

もちろん、その際にも主張の根拠を確認するのが重要です。

 

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