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【要約】松下幸之助著『指導者の条件』【書評】

指導者の条件

松下幸之助著『指導者の条件』の書評です。

松下先生は、偉大なる日本の実業家です。
松下電器産業(現パナソニック)の創業者であり、「経営の神様」との異名も有名です。

経営の本質を喝破しており、1960年の時点で「生産性向上の重要性」を強く指摘しています。
また戦後の混乱期には、企業の内部留保を取り崩し、リストラを極力避けたという実績があります。

 

『指導者の条件』は、松下先生がリーダの条件をまとめた一冊です。

先生は「会社の経営は全て経営者の責任」とおっしゃっています。

「結局一つの団体、組織の運営がうまくいくかいかないかは、ある意味ではその指導者一人にかかっているともいえるでしょう。
その責任はすべて指導者一人にあるといってもいいと思うのです。」

 

日本国の経済がこれからどうなるかは、各企業の社長がカギを握っています。
トップが指導者の条件を満たしているなら、企業の総和である日本経済は成長します。
逆にトップがどうにもならん人間なら、日本経済はますます衰退していくでしょう。

また民主主義を採用している日本国では、すべての人がリーダーの力を見極めることが重要です。
指導者の条件を兼ね備えているリーダーのか、それとも指導者の条件に不足する偽物のリーダーなのか。

そのような視点から、誰についていくべきなのか、誰を特に応援するべきかを考慮する必要があります。
そういった意味でも『指導者の条件』は、世間に広く読まれるべき一冊だと感じます。

 

『指導者の条件』【要約】

本書は、全102ヶ条にわたって、「リーダーの身につけるべき条件」がまとめられたものです。
その多くが、過去の偉人の実例をもとに解説されています。

全てをご紹介することは叶いませんので、いくつか抜粋して要約とさせていただきます。

 

「あるがままに認める」聖徳太子

十七条憲法の第一条は、次の文章から始まります。

「和を以て貴しと為し、忤(さか)ふること無きを宗とせよ。人皆党(たむら)有り、」

「人皆党有り」というのは、人間はみなグループを作るものだ、ということです。

 

分かりやすいのは、国会の与党・野党でしょう。
また会社でも、出身大学によって学閥ができたりします。

経済界では、慶応の学閥「三田会」に富や権力が集中していることが有名ですね。

こういった派閥が、全体の運営に弊害をもたらすことが多いので、派閥解消が盛んに叫ばれた時代もありました。

 

松下先生は以下のように解説します。

「つまり、派閥というものはなくせるものではなく、その存在をみとめた上で、活用、善用すべきものだと思う」

 

人間の本質というものは、なかなか変えることができません。
またそれを無理に変えようとしても、必ず反発の動きが起きます。

まずは全てを「あるがままに認める」、そしてそこからどうしていくべきかを考える、それが指導者の条件です。

 

例えば、新入社員が仕事をできないことに一々イラつくのではなく、最初は誰しもなかなか上手くいかないものだ、どうしたら成長して仕事ができるようになるのか相手の視点で考えよう、という意味ですね。

リーダーは、自分の利害や個人の囚われを排除して、物事をあるがままに観察することが重要です。

 

「使命感を持つ」日蓮上人

鎌倉時代に幕府の迫害に遭いながらも、敢然と仏教の布教を続けた人物がいます。
それが日本の偉大な宗教家・日蓮上人です。

日蓮上人は、語りえぬほどの艱難の中で、強い信念のもと布教活動を生涯続けました。

 

お言葉に「我日本の柱とならむ、我日本の眼目とならむ、我日本の大船とならむ等とちかいし願やぶるべからず」というものがあります。

畢竟するに、「日本を救う」というとんでもなく強い思いです。
この強い信念、大きな使命感こそが生涯の布教活動を続けさせたのでしょう。

日蓮上人の考え方自体は、賛否両論があります。
しかし、その行動力には誰も異論を唱えられないでしょう。

 

松下先生は次のように仰います。

「一つの使命を見出し、使命感をもって事にあたっていく時には、そうした弱い心の持ち主といえども、非常に力強いものが生じてくる。」

 

以下の記事でもお伝えしましたが、使命感は言い換えると自己洗脳力です。

【夢や目標はいらない】やり抜く人の特徴は自己洗脳力が高いこと【自分にストレスをかける!】結論から言います。 物事をやり抜くことができる人の特徴はたった一つ。 「自己洗脳力が高いこと」 これに尽きます。 ...

人間は、個人的な欲望だけでは力が弱すぎます。
社会のためになる「大きな欲望」と「大きな危機感」によって使命感は生まれます。

なにかを達成できなくて悩んでいる、そんな人はぜひ上の記事をご覧になってください。

 

「一番大切なこと」現代の優れた指導者たち

指導者の条件では、過去の偉人たちの事例をもとに、その学ぶべき点を解説されています。

しかし、102ヶ条最後の章だけは、現代のリーダーから教訓を得る文章となっています。
ある条件を備えていないが故に、部下や周りから悪口を散々言われている人、事業で大きなミスをする人、人生に失敗してしまう人がたくさんいます。

 

松下先生は以下のように説明します。

「最近の体験から指導者にとってのその大切さが改めて痛感されるので、あえて最後に繰り返して強調した次第である。」

 

経営の神様・松下幸之助が、痛感した大切なリーダーの条件とは。
ぜひ本書の最終章をご確認ください。

 

未だ『指導者の条件』をお持ちになっていない場合は、本棚に一冊追加することをおすすめします。

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『指導者の条件』【書評】

松下先生は、偉大な実業家です。
しかし、その最大の功績は人間研究であると言われています。

たしかに実業家としても、とんでもない結果を出しておられます。
幼少の頃、家は下駄屋でした。9歳から丁稚奉公を始め、16歳で大阪電灯(現:関西電力)に勤めています。
その後、23歳で松下電気を創業。数々の苦難を乗り越えながら、55歳で億万長者に。
一生で約5,000億円の資産を築いたとされ、死亡時遺産総額は約2450億円、日本の最高額です。

 

それでも松下先生の最大の功績は人間研究であると言えます。
初めて人間観についてまとめた文を世の中に発表したのは1951年、56歳のときでした
そこから30年以上にわたって人間観を検討し直し、絶え間なく考え続けています。

本書は、そんな松下先生の努力を垣間見ることができる一冊と言えるでしょう。

 

あとがきにおいて、先生はこう仰ります。

「私自身、こうしたものを書きながら、自分がいかに実行できていないかということを改めて感じさせられてもいるのです。」

 

誰よりも「人間はどうあるべきか」を研究し、誰よりも「その理想像になろう」と努力し続けた人。
その人物こそが松下幸之助であると感じさせられます。

 

松下幸之助の晩年は宗教家の一面も

あまり知られていないことですが、松下先生は人間研究を続けるうち、晩年には宗教レベルの次元を思索されていました。

別邸である真々庵、門真本社、PHP研究所に、宇宙の根源を祀るお社を設置し、「根源」と書かれたお札を奉納しています。
根源の社へのお参りを欠かさず、悩んだときは御前で長い祈りをしたようです。

 

1974年には伊勢神宮・崇敬会第3代会長をつとめられています。
先生のお孫様でいらっしゃる松下正幸さんは第8代会長です。

その関係か、松下先生が設置された「根源の社」も伊勢神宮を模した作りです。

真言宗醍醐派、成長の家、辯天宗、天理教と関わりがあったことも有名です。

 

その中でも、天理教は先生に大きな影響を与えました。
1932年、商売が“上手すぎた”松下先生は、競合他社が落ちていく様をとても悩みます。
そんな頃、縁あって知人の勧めから、天理教教会本部に参拝することに。

そこで見た光景に先生はビックリされました。
みんなが礼儀正しく、テキパキと働き、立派な建物も立っている。
多くの人が、材料置き場から材木をかついだり、製材所では、木を削ったりしています。

 

人は誰しも、お金を得るため、生活費を得るために働く。
ところが天理の人々は、お金ももらわずに働いている。
そしてタダ働きなのにも関わらず、自身の経営する工場の労働より、楽しげに生き生きと働いている。

その衝撃の光景を見た帰り、電車の中で考え続けて、先生は宗教と商売の違いについて閃かれました。

「そこで、悟ったんやな。こっちに使命感がないからや。向こうは、人間を救うという大きなもんがある。こっちにはない。それでは、商売する者の使命はなにか。そや、貧をなくすことや。この世から貧をなくすことが、わしらの使命なんや。」

 

これが松下幸之助「水道哲学」の始まりです。

また1949年には、天理教和歌山教務支庁において、「PHPと宗教」という題で講話もされています。

偉大な実業家には、偉大な宗教的側面もあったことが窺い知れます。

 

松下幸之助著『指導者の条件』【まとめ】

経営の神様による「リーダーの条件」を、少しばかりご紹介しました。
中でも成功のカギを握るのは、「使命感」と言えそうです。

『指導者の条件』では、他に全102ヶ条の条件がまとめられています。

生涯で5000億円を稼いだ伝説の人間が大切にした教訓です。

広く世間に知れ渡るべき一冊でしょう。

 

先生の御徳を偲びつつ、日本の豊かさを形作ってくださったことに感謝いたします。

 

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参考論文等:
松下幸之助『指導者の条件』PHP研究所
川上恒雄『松下幸之助の死生観・霊魂観』
川上恒雄『松下幸之助と成長の家』
福田 和也『松下幸之助 vol.3 水道哲学の原点となった 天理教との出会い』
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/1667
『実業家を引き合わせた「辯天様」――PHP活動〈61〉』
https://konosuke-matsushita.com/column/phpshashi/no61.php